確定拠出年金の改正2022年

確定拠出年金法改正案が2020年5月29日に成立し、2022年4月から確定拠出年金制度が改正されます。こうした改正の背景には、日本人の健康寿命の延伸や少子化に伴い期待される高齢労働者数の増加があります。より多くに人がより長期にわたって働く一億総活躍社会では、さまざまな働き方に即してさまざまな年金の受け取り方が選択できる必要があります。同改正は働く人が加入できる確定拠出年金とその受取時期の自由度を拡大することで、こうした要請に答えることを目的としているのです。

①2022年4月から受け取り開始時期の上限が75歳まで延長されます。

・年金の受給を開始する年齢の上限を75歳まで延長され、60歳~75歳までの間で自由に選択できるようになります。商品の運用も75まで可能となり、2022年4月に施行されます。

②2022年5月から、企業型DCとiDeCo両方の加入可能年齢が拡大します。

・企業型DCの加入可能年齢が70歳未満まで拡大します。現在の企業型DCの加入可能年齢は原則60歳未満までで、特別な規定により延長できる場合も65歳未満まででとなっていますが、2022年5月からは厚生年金被保険者であれば70歳未満まで加入できるようになります。これにより、65歳以上になってもまだまだ働きたいという人は70歳になるまで企業型DCの拠出を継続して年金受給額を増やすことができます。ただし企業によって加入できる年齢は異なります。また、現行法では60歳以上になっても企業型DCに継続して加入するための条件として、60歳となる前から同一の事業所で続けて雇用されている必要がありますが、この制限についても改正により撤廃されます。したがって、60になってそれまで勤めていた会社からグループ会社転勤することになった人なども企業型DCに加入できることになります。

・iDeCoの加入可能年齢が65歳未満までに拡大します。iDeCoに関しては、現在は加入可能年齢が60歳未満までとなっていますが、企業型DCと同じく2022年5月からはサラリーマンや公務員などが該当する第2号被保険者であれば65歳まで加入することができるようになります。第2号被保険者に扶養されている配偶者が該当する第3号被保険者はこれまで通リ60歳未満までが加入可能となりますが、国民年金に任意加入している人であれば65歳までiDeCoに加入することができるようになります。

③2022年10月から、企業型DC加入者のiDeCoへの加入条件が緩和されます。

・現行法では、企業型DCに加入している人がiDeCoへの加入が認められるのは、労使合意があり、かつ事業主掛け金の上限を引き下げた場合に限定されています。たとえば、他の確定給付年金を実施しておらず、企業型DCの事業主掛け金が上限いっぱいの55,000円の企業であれば、iDeCoの掛け金上限である20,000円分の事業主掛け金を引き下げて35,000円にしなければ、その企業型DCの加入者全員がiDeCoに加入することができませんでした。2022年10月からは、この2つの条件を満たさずとも企業型DCの加入者がiDeCoに加入できるようになります。この条件の緩和により、これまで加入できなかった多くの人が両方の確定拠出年金に加入できるようになることが期待されます。上記の条件緩和で1つだけ注意したいのは、事業主掛け金の上限を引き下げなくてよくなるからといって、企業型DCとiDeCoのどちらも上限いっぱいまで拠出できるわけではないということです。具体的には、たとえば確定給付年金を実施していない場合では、事業主掛け金は最大で55,000円まで、iDeCoの掛け金は最大で20,000円までとなりますが、2つの掛け金が55,000円を超えないように調整しなければなりません。また改正後であっても、加入している企業型DCで加入者本人が上乗せして拠出する「マッチング拠出」を利用している加入者などは、iDeCoに併せて加入することができません。

 

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